若き法曹の皆様へ 「フェアネス講座第1回」
【ホワイト弁護士かく語りき】
弁護士は、いかに闘うべきか。弁護士会は、これをいかに支えるべきか。
Law支援の会代表 遠藤直哉
(弁護士法人フェアネス法律事務所代表弁護士・法学博士)
■谷間世代の闘い方・・・弁護士会と国に各1/2責任を取らせる
谷間世代は、1人約300万円の貸与金の返還義務を負っています。司法修習生のとき、無給で拘束をされるという労働者以下の生活を強いられました。谷間世代は、ビギナーズネットをつくり、給付請求をしたのも理解出来ます。国を相手に多くの訴訟をしたこともその立場に立てばやむを得なかったのかもしれません。しかし、結局、6年にわたり合計約240億の負債を負い、また現在、最低賃金に等しい低廉の給費しか貰えない制度になりました。修習生の時には、二回試験の難関があるため、強い意見を言えないのは分かります。しかし、弁護士になった以上は、強い立場に立っているのではないでしょうか。このような状況にしてしまった弁護士会、最高裁、法務省に疑問を感じないのでしょうか。多額の負債をおわせ、不当な制度を続けていることを改善しなければ、今も若者に被害が発生しているのです。放置していいのでしょうか。天下の法というべき司法改革審議会の意見書は、司法修習生の給費の廃止または貸与制への移行を謳っています。この趣旨は、明らかに司法修習制度の廃止または大幅な縮小を意味していました。ビギナーズネット、訴訟された原告の方々、記者会見をされ最高裁に要請をした方々へ呼びかけます。いまこそ司法修習を廃止し、法科大学院制度を発展させ、国際的に戦える法曹を育て、AIにも勝てる法曹をつくり、AIを使いこなせる法曹になりましょう。司法修習に関しては、東弁の後藤富士子弁護士が以前に厚い本である「法曹一元」を出版され、先日、自由法曹団通信:1648号に『「統一修習」は阿片だ!!-韓国が照射する日本の旧態依然』との意見を載せておられます。私は「司法修習は法曹一元の壁」と言っています。韓国を見習って司法修習を廃止し、2年の研修弁護士制度を導入し、この修了後に任官できる日本型法曹一元に一歩踏み出しましょう。
■刑事裁判の闘い方・・・証拠開示
日本の刑事裁判では、被疑者が逮捕、拘留されたとき、警察と検察が集めた証拠を弁護人が見ることはできません。弁護人は、被疑者と接見して、話を聞くことができますが、その話の中から、漠然とどのような書類やものがあるかを知ることでしかわかりません。これでは、弁護士として仕事ができません。他方で、弁護人が取り調べに立ち会うことを米国では認めています。ミランダルールといいます。日本では未だ導入できていません。逆に、ビデオテープで撮ることを可視化と言い、これが一部実施されるようになりました。しかし、肝心の書類やものを弁護人に見せないのはなぜでしょうか。証拠隠滅をする恐れがあるからといわれています。弁護士は、そのようなことをしないというのが大きな前提であるはずです。さらに起訴されて裁判が始まっても、すべての証拠が開示されません。現在世界の各国では、全面的証拠開示に向かっています。特に、検察官は無罪を証明すると考えられる証拠が提出する義務を負います。日本では、このような重要な義務を定めていません。日本の刑事裁判をより改善しなくてはなりません。弁護士会が取り組むべき課題です。
■冤罪はなぜなくならないか・・・教育から変えていこう
冤罪は戦前から現在まで数は減ったものの、依然として続いています。日本がこれほど近代化したのに、冤罪は生まれるどころか、途中で気がついても、すぐに無罪にできません。黒ではなく、グレーから白ではないかと思ったら、なぜなるべくはやめに無罪放免にできないのか、実に不思議でする。その理由は全面的証拠開示がないからです。しかし最近では、再審でも重要証拠が出ています。裁判官は、有罪でない心証を持っているはずです。しかし、刑事裁判の開始の時に、地方裁判所で一度有罪となると、その判決を誤審だということは、同僚の裁判官を批判することになり、なしえないと考えているといえます。もちろん国家賠償の必要も出てきます。そこで、次善の策としては、逮捕後の長期拘留をしないで充分に争わせる機会を与えること、グレーの場合には死刑ではなく、大幅に短縮した刑とすること、再審手続を簡便に迅速に行うことなどの改善をした方が良いでしょう。現在再審開始決定がでても、本格的な審議が始まるまえに抗告されるとその決定がまた覆り、再審開始が取消になる例があり、まことに手続が異常です。つまり、無罪の証拠により、再審開始決定が出る以上、ただちに継続して、最終的な判決に向けて確認的な審議をすれば良いだけです。法科大学院の教育で法曹となる学生を教育して、よりよい刑事裁判にできるようにしましょう。